Archive for 10月, 2011

10月 24, 2011

STSについて考えてみた。


最近になって、ようやく3月11日からの政府関係機関の動きが明らかになってきましたね。
その中で、大変気になっている記事を今朝見つけました。朝日新聞の「プロメテウスの罠」という連載記事です。
もしお手元にありましたらご覧ください。

3/11の震災当時、労働安全衛生総合研究所に所属しておられた木村真三さんの、
震災後の放射能汚染状況の調査に関する木村さんとNHKの動き、それに対する政府の動きが
木村さんの視点から非常によくまとめられている記事であるように見えます。

木村さんは、震災直後から調査に向けて動き出していたのに、それを止める厚労省。
仕事をやめてまで調査に飛び出していった木村さんと、特集番組を組んだNHK。
更に、NHKサイドでも過剰な安全への配慮から、調査の妨げになる内規。

これらの多くの障害と助けを差し伸べる周囲の人々。
様々な助けによって、「科学者の使命」を果たそうとする木村さんの姿に、大変心を打たれました。
それと同時に、命を張ってでも、科学者として人々に正しい情報を伝えようとする木村さんに対する
政府関係者の妨害に、とても腹が立ちました。
正しい情報を伝えず、ただひたすら安全神話を作ろうとしたことに対する、
「混乱を招きかねない」という政府の言い訳が、本当に空虚だったのだということが、
この記事に出てくる人々の、正しい情報を知ったときの「早く知りたかった」という言葉から痛感されます。

科学技術を陰で支える科学者・技術者と、その知識も十分でないままにコントロールしようとする権力者。
こういう構図は、政府でも企業でもよくある話だとは思いますが、往々にしてコントロールしようとする側が
間違いであったという風に言われることは歴史的にもよくあることです。

どうしてこういうことが繰り返されるのか、なぜ歴史から学べないのか。
今回の一連のことから、仕組みを変えようという動きになっていかないといけないと思います。

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10月 17, 2011

反応機構


昨日の、アト秒化学の反応機構に関連した話でも。

最近は(ここ20年以上ですが)、化学の中では、有機化学が大変盛り上がっています。
でも、多くの人から見れば、「盛り上がってるってどういうことなの?」という感じがすると思います。

もっともわかりやすい指標は、「たくさん論文が発表されている分野」ということです。
盛り上がっている、とはすなわち多くの人が興味を持ってその分野に取り組んでいる、という状態です。
その分だけ多くの実験が行われ、その結果が多く発表されます。
そうしてたくさんの論文が出てくると、周辺の分野を研究していた人も、「あ、こっちの研究も面白そうだな」ということで参入して、更に研究人口が増える、というサイクルに入ります。

更に、このようなサイクルが続くと、既存の論文雑誌だけでは発表の場が足りなくなってきます。
そうなると、新たな論文雑誌が発行されることになります。
そうして、徐々にその分野の論文雑誌が増えていくことで、知識も蓄積され、新たな発見がなされていきます。

そんなわけで、ずっと盛り上がっている有機化学ですが、私は割と好きです。
専門ではないんですけどね。私は計算化学ですし。
でも、計算科学的に考えられる電子の移動と、有機化学の反応機構はかなり整合性が高いので、感覚的な理解がそのまま正解に直結していく場合が多いので、パズルを解く感覚で反応を考えていけます。

とは言うものの、新しい反応が出てくると「何だこれは・・・」ということも多いんですけどね。

そんなわけで、私のオススメの有機化学の本はこれです。

演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで

私も、大学院入試前から散々お世話になりました。
中身が英語なのがちょっと残念ですが、普段から論文を読みなれている人なら全く問題なく読める程度の難易度です。
また、英語がどうしても嫌でなければ、反応機構は言葉は関係ないですから、すぐに理解できます。
大学で有機を専門にしている人、大学院入試なんだけど有機はよくわからないという人、大学院で有機を専門にしている人まで、幅広く楽しんで解ける問題集になっていると思います。

そんな私が今狙っているのはこっち。
人名反応に学ぶ有機合成戦略

英語版のほうがいいという噂もあり、どっちにしようかとも思っていますが。とにかく問題なのは、値段が高い!!!ってことです。
でも、やっぱり人名反応は重要ですからね。わざわざ人名が付くくらい有名になっている反応、ですから。
どうにかこうにか、お金を工面して買いたいなぁ。。。

10月 16, 2011

化学反応に伴う電子移動


近年は、アト秒化学と呼ばれる技術が発達しつつあります。
アト秒とは何かと言うと、1.0×10^(-18)秒、つまり、1000000000000000000分の1秒(0.000000000000000001秒)を表す言葉です。
このようなごく短い時間の単位で、反応中の分子にレーザー光を照射し、それによって電子の移動を観測するのが、アト秒化学と呼ばれる分野です。この技術の発達によって、少しずつ化学反応の仕組みが解明されつつあります。
これまでは、量子力学的な計算によってしか化学反応の仕組みを知ることは難しい状況でしたが、レーザーパルス技術の発達によって、量子力学的な仮想的な系だけでなく、現実的な系についても反応の検討が技術的に可能になっています。
さらに、アト秒化学によって、NO2やベンゼンなどの振動によって安定構造を作る分子についても、その振動の過程が分析できるようになりました。このことで、これまで通説として語られていたことも、99.9999%真実であるという確証が得られました。

これからも、技術発展が続くでしょうが、これまでの常識と、これからの常識と、どのように変化していくのでしょうか。

参考記事:Watching Motion of Electrons in Molecules During Chemical Reactions

10月 16, 2011

やっとひと段落…


合唱祭→文化祭のコンボはかなりきついですね。
ようやくひと段落しました。

間にノーベル賞とか、大変なニュースがたくさんあったのに、更新できずとても残念でした。

ノーベル化学賞は、「準結晶(Quasicrystal)」のダニエル・シェヒトマン博士(イスラエル工科大特別教授)でしたね。
固体と言えば、結晶と非晶質(アモルファス)。これが常識でした。
しかし、そこに新しい相、準結晶を作り出したのがシェヒトマン博士です。

では、準結晶とはどういう状態なのでしょうか?
図は、化学者のつぶやきから頂いております。

結晶は規則正しい配列、非晶質(アモルファス)がランダムな配列の固体なのに対し、準結晶は中途半端な並び方ですね。
平行四辺形がいろんな角度で並んでいる感じです。
正確には、「「並進対称性と周期性を欠くパターンでありながら、空間を埋め尽くすことができる長距離秩序のある状態」と表現されます。要するに、部分部分で見ると同じ図形が並んでいるものの、全体的には向きが一定でないなど完全な規則性は見えないという状態です。

現在、この発見は新しい性質を持つ固体の合成に役立つのではないかと期待されています。

これまで、この研究は物理学分野における賞を受けてきたので、ロイターなどの予想には全く出てきませんでしたね。
私も、準結晶の存在は知っていましたが、固体物理学分野の発見だと思っていたので、ノーベル化学賞で出てきたときには「まさか!」という感じでした。
という感じで、これからも最新の情報にアンテナを張って、新しい知識を増やしていきたいと思っていますが、
もっともっと、わくわくする研究がいっぱい出てくるといいなぁ、と思っています。
それが、子どもたちの意欲にもつながると思いますし。